2017/07/13
田舎暮らしブログ
**山暮らし雑録** 百姓ダマシの農業モドキ、ときに四肢六脚録


(その一) じょせつ

雪うさぎ「雪はそんなに多くないですよ。毎年膝ぐらいまでです。」不動産屋氏はこう説明した。ここ長野県小川村は、長野市と大町市青木湖の中ごろに位置する。住まいはその東南の一角、緯度では金沢・剣岳・鹿島槍ヶ岳・宇都宮市・日立市、経度だと新潟県能生市・松本市・。伊那市・掛川市とほぼ同位置に並ぶ。標高660m、小さな尾根の上の一軒家である。引っ越して初めての冬2014年12月はこの月としては近年にない大雪で、積雪60cmと表示された。もっともこれは除雪せずに放置した値で、実際には15・5・3・2・20・42cmと数日間降り続けた。住まいから幅3mの小さな村道がメイン村道の峠まで続いている。メイン村道は24時間体制で村が除雪を行うが、峠から家までの小さな村道は除雪されない。車を出すためには、この間の50mを自力で行わなければならない。積雪5cmだと30分、軽い掃き掃除ほどの作業である。これが15cmになると3時間、30cmだと6時間を超える発汗作業となる。
遠望     峠

 

雪うさぎ積雪量と除雪労力との関係は直線もしくは指数的というよりも階段的である。終わるにはこの間の積雪が待っており、振り出しに戻る。道具は雪スコップとスノウダンプというシャベルの親方が使われる。スノウダンプは座布団大の塵取型金属板と角度をもたせた取っ手からなる。取手を両手で持ち、雪をすくうと押して運びそのまま谷側に投げ落とす。下り向いて右が谷側である。スコップは当たり前に押す・投げるの2動作、雪かきはこれらの行為の無限反復である。10cm以下の雪なら車は運転できるからしなくても良さそうなものだが、その先どれほど降るかが分からないので手は抜けない。除雪労力階段的増加の恐れがあるのである。他方雪は一回タイヤで踏まれると、溶けて固まり手に負えなくなる。加圧された雪は氷となってコンクリートに接着し、鉄スコップはおろかショウレン(4尺・1貫 穴掘専用鉄棒 土佐産)でも剥がすことができない。雪解けまで、ツルツルの氷の上で寒々とした日々を過ごすことになる。春に辺りの雪が溶けても氷は残るため、待ちきれずに力づくではぎ取る羽目になる。これには半日か1日の労働を必要とする。いずれにしても手抜きは倍返しの懲罰付きである。山暮らしにはまじめな働き者を育てる要素がある。

雪うさぎそこで考えた。汗をかくのは心地よい疲労感に達成感を伴う、のではあるが、冬中これを一方的に強いられるのも面白くない。車の前に箱を付けて押せばいいではないか。車の底を見ると、バンパー後方左右に牽引用のフックがあり、これに取り付けられるかもしれない。具体構造と材料はホームセンターで見て考えよう。車で30分かけて長野市ホームセンター「ムサシ」に来てみると、見たことのない金具類が豊富である。1時間ほどああでもないこうでもないと吟味した挙句、以下の構造が思い浮かんだ。

車体牽引フックにUボルト-アイ(eye)ナット-丸型ロットピンの金具類を吊り下げて除雪器具をこれに固定する。器具は木製で、縦2本のソリ棒とこの上に掛ける2本の横棒・前板とこれを支える2本の突っ張り棒およびその補助横棒からなる。材料は2×4材とコンパネである。ソリ棒の下に塩ビパイプの半割をビス止めし、元に穴を開けて丸型ロットピンを通せばソリの手前が車にぶら下がる。箱案はこの時点で直ちにソリ型に修正された。作業は降る雪の中のやっつけ仕事となり、出来栄えは美観を欠くがこれで軽く雪を押し出すことが証明され、モノは実現化した。

雪うさぎその後アイナットにアイボルトを付け足して直角前方に吊具の腕を伸ばし、前板は後方と右方に角度をつけた。これで、ソリが後に振られてもソリ棒がバンパー下面を打つことが減り、さらに前進するとソリは後方下向きに押され、雪を持ち上げて右側に押し出す力が加わることになった。更に底張り塩ビパイプの代わりに直径10cmのゴム車輪をつけるなどの修正も加えて効果が増した。結末としては、雪かきが30分で終わることになった。何よりも、いくら続けても運転席で座っているだけだから汗をかかない。これもまたいいものである。発汗労働は山暮らしでは他にも尽きることがない。稼働状況はビデオのとおりである。次作はこれに美的要素が加わることなる。

 

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